うつ病の種類

うつ病とその周辺の心の病気の種類についてご紹介します。

1 大うつ病性障害

うつ病にはさまざまな種類があり、そのなかのひとつに「大うつ病性障害」があります。一般的に「うつ病」という言葉からイメージされるのがこの大うつ病性障害です。
うつ病のなかでは最も基本的な症状です。

抑うつ気分と興味・喜びの喪失は必須症状で、最低どちらか1つが認められる必要があります。
これを満たした上で、次の残り7つの症状のうち5つ以上認められると、大うつ病性障害だと診断されます。

(1) その人自身の証言(例:悲しみまたは空虚感を感じる)か、他者の観察(例:涙を流しているように見える)によって示される、ほとんど1日中、ほとんど毎日の抑うつ気分
注:小児や青年ではいらだたしい気分もありうる
(2) ほとんど1日中、ほとんど毎日の、すべて、またはほとんどすべての活動における興味、喜びの著しい減退(その人の言明、または他者の観察によって示される)
(3)食事療法をしていないのに、著しい体重の減少、あるいは体重増加(例:1ヶ月で体重の5%以上の変化)、またはほとんど毎日の、食欲の減退または増加
注:小児の場合、期待される体重増加がみられないことも考慮せよ
(4)ほとんど毎日の不眠または睡眠過多
(5)ほとんど毎日の精神運動性の焦燥または制止(他者によって観察可能で、ただ単に落ち着きがないとか、のろくなったという主観的感覚ではないもの)
(6)ほとんど毎日の易疲労性、または気力の減退
(7)ほとんど毎日の無価値観、または過剰であるか不適切な罪責感(妄想的であることもある。単に自分をとがめたり、病気になったことに対する罪の意識ではない )
(8)思考力や集中力の減退、または決断困難がほとんど毎日認められる(その人自身の言明による、または他者によって観察される)
(9)死についての反復思考(死の恐怖だけではない)、特別な計画はないが反復的な自殺念慮、または自殺企図、または自殺するためのはっきりとした計画

2 双極性障害

双極性障害は、精神疾患の中でも気分障害と分類されている疾患のひとつです。うつ状態だけが起こる病気を「うつ病」といいますが、このうつ病とほとんど同じうつ状態に加え、うつ状態とは対極の躁状態も現れ、これらをくりかえす、慢性の病気です。
昔は「躁うつ病」と呼ばれていましたが、現在では両極端な病状が起こるという意味の「双極性障害」と呼んでいます。なお、躁状態だけの場合もないわけではありませんが、経過の中でうつ状態が出てくる場合も多く、躁状態とうつ状態の両方がある場合とはとくに区別せず、やはり双極性障害と呼びます。

双極性障害は、精神疾患の中でも治療法や対処法が比較的整っている病気で、薬でコントロールすれば、それまでと変わらない生活をおくることが十分に可能です。しかし放置していると、何度も躁状態とうつ状態を繰り返し、その間に人間関係、社会的信用、仕事や家庭といった人生の基盤が大きく損なわれてしまうのが、この病気の特徴のひとつでもあります。
このように双極性障害は、うつ状態では死にたくなるなど、症状によって生命の危機をもたらす一方、躁状態ではその行動の結果によって社会的生命を脅かす、重大な疾患であると認識されています。

3 気分変調性障害

人より落ち込みやすく、物心ついたころから自分のことを好きになれない。
自分に自信がなく、何かをしてもうまくいくとは思えない。
このようなマイナス思考は性格や考え方によるものだとされることが多く、あまり深くは考えられないものです。
しかし、こうしたマイナス思考は、実は性格や考え方だけの問題ではありません。
気分変調性障害という精神疾患によって引き起こされている場合があり、きちんと治療を行えば改善できるものもあります。

気分変調性障害の特徴は、一日中気分が冴えない、軽度の抑うつ症状が2年以上続くことです。症状はうつ病ほど重くなく、会社に行く、家事をするなど社会生活を送ることが可能です。長い間性格の問題として扱われ、精神疾患として治療をされないこともありました。現在では他の精神疾患と同じように治療され、気分変調性障害から回復したケースも多くあります。

4 新型うつ病

新型うつ病という名前は、従来のうつ病を定型うつ病とした場合、その枠に収まらないことからつけられたものです。
10代後半から20代、30代前半の若い世代に増加しています。

新型うつ病の場合は自分の興味のあることや好きなことを前にすると、抑うつ状態から回復します。このように、好ましいことがあると気分が良くなることを気分反応性といいます。
会社や学校に行こうとすると疲労感から起き上がれず、自分の好きな趣味のためなら元気に出かけていけるといった矛盾がおきるため、周囲から怠けているだけと誤解を受けることが多いのも新型うつ病の特徴です。

5 冬季うつ病

ある決まった季節にだけ抑うつ症状や睡眠、食欲に異常をきたすうつ病のことを季節性情動障害といいます。
その中でも、冬の間だけにみられるうつ病は冬季うつ病と呼ばれています。
冬季うつ病は、10月や11月に気分が落ち込み、2月や3月に症状が治まるというサイクルを繰り返します。

冬季うつ病では特に過眠過食になる傾向があり、炭水化物や甘いものをよく摂取するようになります。倦怠感から運動量が減って体重が増加しやすくなるほか、過眠から生体リズムが狂い、昼夜逆転して規則正しい生活が送れなくなります。
冬季うつ病は冬が過ぎれば嘘のように症状が消えてなくなってしまうので、本人や周囲は寒いのが苦手なだけと考え、気づくのが難しい病気です。

6 婚前うつ病

結婚は人生の中でもとても大きな決断であり、幸せな出来事です。
しかし、結婚そのものが直接的な原因ではないにしろ、結婚することによってうつ病になる可能性があります。

婚前うつ病は、その名のとおり結婚に際して陥るうつ病様の症状のことです。結婚そのものが原因というわけではありませんが、結婚することで起きる様々な変化に対する不安や恐怖が婚前うつ病を引き起こします。
婚前うつ病は結婚する女性の多くが経験している症状であり、女性特有のものであるという認識が強くあります。しかし、婚前うつ病は女性だけが陥るものではなく、実は男性にもその可能性があります。女性に比べると結婚による変化が少ない男性ですが、家族を養うという責任やプロポーズするという重圧から婚前うつ病に陥ります。結婚に対する様々な情報も婚前うつ病を引き起こす要因になり得るため、結婚に対する期待が大きかったり、より積極的に結婚に向けて動く人のほうが陥りやすいものです。

7 産後うつ病

出産後は休む間もなく日々の授乳やおむつ替え、寝かしつけなどのお世話に追われているのではないでしょうか。初めてのことばかりで疲労困憊…という人も多いと思います。しかし、疲れだけではなく、気分が落ち込んだり、イライラしたりといった症状がある場合、それは「産後うつ」かもしれません。

産後うつとはその名の通り、産後に現れるうつ症状のことです。多くは産後4週以降から1年以内に発症します。育児へのプレッシャーや不安などがストレスになって発症するもので、うつ病の一種と考えられています。旦那さんや両親の協力を得られず、1人で育児のすべてを抱え込んでしまっているママほど発症しやすく、家事も育児も完璧にこなしたいという人や責任感が強い人は特に注意が必要です。
産後のママの体は妊娠前の状態に戻ろうとするためにホルモンバランスが変化し、心身ともに不安定な状態になっています。ここに育児疲れや孤独感、家事と子育てを両立できないことへの罪悪感などが作用して、産後うつを発症すると考えられています。
気持ちがふさぎ込んだり何をするにも億劫になるほか、赤ちゃんがかわいいと思えない、自分は母親失格だと思う、といった考えが頭を離れなくなります。
産後うつは、一種のうつ病なのできちんとした治療が必要です。精神科や心療内科では、カウンセリングや薬物療法を行います。症状が軽ければ、カウンセリングで悩みや不安などの話を聞いてもらうだけでも改善されていきます。人によっては抗うつ剤や精神安定剤が処方されるので、医師の指示に従って正しく服用してください。

8 仮面うつ病

なんだか身体が痛い。微熱がずっと続いている。頭痛やめまいがある。
うつ病は、精神症状が一般的ですが、なかには身体症状の方が前景にたつケースも少なくありません。身体疾患の仮面をかぶったうつ病という意味で、仮面うつ病と呼ばれています。主体となる苦痛が身体症状となると、内科、産婦人科、などの心の専門医以外の診療科を受診し誤診されてしまうこともあります。
しかし、診察をしても身体に異常がみられず、症状に合わせた薬を処方しても治らない場合があります。

仮面うつ病はうつ病の一種ではありますが、気分の落ち込みや興味・喜びの喪失などといった精神的な症状は軽度です。代わりに身体的症状が強く現れます。そのため最初は内科などを受診することが多いのです。この場合では自律神経失調症と判断されることも多く、そのまま自律神経失調症に対しての治療が行われることがあります。当然、自律神経失調症の治療では、異なる病態となる仮面うつ病は改善されません。

仮面うつ病の診断は、最初に受診した医師がうつ病に関する知識を持っているかどうかが重要になります。身体的な症状が強く現れるとはいえ、抑うつや興味の喪失といった精神的な症状も少なからず現れるため、そこでうつ病を疑えるかどうかにかかっています。また、自分もそういった症状が見られる場合には気のせいだと決めつけず、医師に相談するようにしましょう。

9 退行期うつ病

従来のうつ病は中高年が、新型のうつ病は若年層がかかりやすいということで、うつ病に注意しなければならない年代は随分と広がっています。
では更に上の年代は大丈夫なのかといえば、実は高齢者がかかりやすいうつ病もあります。
これは退行期うつ病と呼ばれるもので、中年期から老年期に差し掛かる頃で、定年退職や生活環境の変化を経験することで発症するタイプのうつ病です。
初老期うつ病や、定年うつ病などと呼ばれることもあります。
また、女性の場合は、閉経による更年期うつ病も含まれます。
老化による体の衰えで、今まで当たり前に出来たことができなくなったり、定年により社会的地位を失ったことに対する喪失感、歯がゆさ、なんとも言えない気分の焦りや不安を感じるのが特徴です。

退行期うつ病の特徴は、いわゆる仮面うつ病同様に身体的な症状が強く現れるということです。一般的なうつ病同様に抑うつ症状などの精神的症状なども現れますが、あまり強く現れることはありません。
退行期うつ病の厄介なところは、患者が精神疾患であることを容易に認めないことが多い、という点です。
退行期うつ病の場合は身体の痛みとうつ病の関係を正しく理解するまでに時間がかかることが多いため、結果的に治療がうまくいかないこともあります。

10 微笑みうつ病

近年になって、うつ病にも多様な種類があることが分かってきました。
その中の一つに微笑みうつ病があります。
身体の不調があるようだけど、誰かといるときは常にニコニコしていて病気に見えない、そういう方は、もしかすると微笑みうつ病かもしれません。

微笑みうつ病とは、心に抑うつ症状を抱えていながら、誰かといるときは微笑みを絶やさないうつ病のことです。心配させまいという一心で必死に笑顔を作る方が多く、明らかに調子が悪そうなときでも笑顔でいることからこの名前がつけられました。仕事や人間関係などのストレスが主な原因で、他のうつ病と同じく責任感がある真面目な人ほどかかりやすいと言われています。
重傷のうつ病の場合、自殺する気も起きません。しかし、微笑みうつ病のような軽症のうつ病の場合はまだ気力が残っているので、むしろ危険なのです。
微笑みうつ病は身体の不調が重くならないと、周囲は気がつくことがありません。結果、うつ病の無潜伏期が長くなり、病院での診断を受けないままに病状が悪化して最悪の場合は自殺することもあります。
微笑みうつ病は壮年期の大人によくみられます。家庭の大黒柱であったり、会社でも重要な役職を任されていることの多い壮年期の大人は「自分がしっかりしなくては」という思いから、病気を隠しがちです。

11 パニック障害

突然理由もなく、動悸やめまい、発汗、窒息感、吐き気、手足の震えといった発作を起こし、そのために生活に支障が出ている状態をパニック障害といいます。
このパニック発作は、死んでしまうのではないかと思うほど強くて、自分ではコントロールできないと感じます。そのため、また発作が起きたらどうしようかと不安になり、発作が起きやすい場所や状況を避けるようになります。とくに、電車やエレベーターの中など閉じられた空間では「逃げられない」と感じて、外出ができなくなってしまうことがあります。

パニック発作 、予期不安 、広場恐怖が3大症状ということができます。中でもパニック発作、それも予期しないパニック発作がパニック障害の必須症状であり、予期不安、広場恐怖はそれに伴って二次的に生じた不安症状といえます。そして症状のみならず広場恐怖によるQOLの低下が、この障害のもうひとつの特徴です。

「またその場所に行ったら発作がおきるのではないか」「もしも逃げ場のない場所でパニック発作がおきたら・・・」などと思うことから、公園や大通り、人ごみ、電車やバス、エスカレーター、美容室・理容室などの椅子やスーパーのレジ待ちなど、発作が起きても他人ばかりで助けが得られなかったり、そこからすぐには逃げられなさそうな場所を恐れ避けようとします。
日本では認知されてきたのは最近ですが、100人に1人はパニック障害にかかったことがあるとも言われており、そう珍しい病気ではないのです。
パニック障害では薬による治療とあわせて、少しずつ苦手なことに慣れていく心理療法が行われます。無理をせず、自分のペースで取り組むことが大切です。周囲もゆっくりと見守りましょう。

12 適応障害

適応障害は、ある特定の状況や出来事が、その人にとってとてもつらく耐えがたく感じられ、そのために気分や行動面に症状が現れるものです。就職や結婚、昇進、転職などの環境変化、人間関係のトラブルなどで受けたストレスにうまく適応できず、憂うつな気分や不安感が強くなるため、涙もろくなったり、過剰に心配したり、神経が過敏になったりします。また、無断欠席や無謀な運転、喧嘩、物を壊すなどの行動面の症状がみられることもあります。

ストレスとなる状況や出来事がはっきりしているので、その原因から離れると、症状は次第に改善します。でもストレス因から離れられない、取り除けない状況では、症状が慢性化することもあります。そういった場合は、カウンセリングを通して、ストレスフルな状況に適応する力をつけることも、有効な治療法です。

13 摂取障害

大量の食べ物を食べては吐く、極端に食事を減らすなどの食行動の異常が起こる心の病気です。
摂食障害におちいってしまうきっかけは、「ダイエット」と訴える場合がほとんどです。
拒食症や過食症を発症する時期は圧倒的に思春期であり、患者の大半が10~20代の女性であることからわかるように、若い世代の女性は「やせ願望」が強く「もっとやせたい、太りたくない」という思いが強く、過度のダイエットに走る傾向が強いのです。
単なる食欲や食行動の異常ではなく、1)体重に対する過度のこだわりがあること、 2)自己評価への体重・体形の過剰な影響が存在する、といった心理的要因に基づく食行動の重篤な障害です。

最初は軽い気持ちで始めた食事制限が次第にエスカレートしていき、やがては食べることに対する恐怖心が生まれて拒食症を引き起こしたり、反動で過食症におちいって、食べては嘔吐したり暴飲・暴食を繰り返すようになる人も少なくありません。コンプレックスが根っこにあるため自覚症状や危機感が薄いことが多く、症状を悪化させてしまうケースが多いのが特徴です。成長期に摂食障害を起こすと、無月経など後々まで様々な悪影響を及ぼす危険があります。

14 社会不安障害

人に注目されることや人前で恥ずかしい思いをすることが怖くなって、人と話すことだけでなく、人が多くいる場所(電車やバス、繁華街など)に、強い苦痛を感じる病気です。怖さのあまりパニック発作を起こすこともあります。失敗や恥ずかしい思いがきっかけになることも多いのですが、思春期の頃は、自分で自分の価値を認められなかったり自分に自信がもてなかったりすることから起きてくる場合も多くあります。

社会不安障害では、自分でも、そんなふうに恐怖を感じるのは変だなとわかってはいるけれど、その気持ちを抑えることが難しくなります。徐々に、恐怖を我慢しながら生活したり、外出や人と会うこと(怖いと感じること)を避けるようになったりします。

15 強迫性障害

強迫性障害では、自分でもつまらないことだとわかっていても、そのことが頭から離れない、わかっていながら何度も同じ確認をくりかえしてしまうことで、日常生活にも影響が出てきます。意志に反して頭に浮かんでしまって払いのけられない考えを強迫観念、ある行為をしないでいられないことを強迫行為といいます。たとえば、不潔に思えて過剰に手を洗う、戸締りなどを何度も確認せずにはいられないといったことがあります。
こころの病気であることに気づかない人も多いのですが、治療によって改善する病気です。「しないではいられない」「考えずにいらない」ことで、つらくなっていたり不便を感じるときには、専門機関に相談してみましょう。

「ドアに鍵をかけたかな?」「鍋を火にかけたままかも」と、不安になって家に戻ったという経験は多くの人がしていることでしょう。また、ラッキーナンバーなどの縁起にこだわることもよくあることです。
その不安やこだわりが度を超しているなと感じることはありませんか?戸締まりや火の元を何度も何度もしつこく確認しても安心できなかったり、特定の数字にこだわるあまり生活が不便になったりしている場合は「強迫性障害」かもしれません。
強迫性障害は不安障害の一種です。たとえば「手が細菌で汚染された」という強い不安にかきたてられて何時間も手を洗い続けたり、肌荒れするほどアルコール消毒をくりかえすなど、明らかに「やりすぎ」な行為をともないます。

16 境界性人格障害

境界性人格障害は、大多数の人とは違う反応や行動をすることで本人が苦しんでいたり、周りが困っているケースに診断される精神疾患です。認知(ものの捉え方や考え方)や感情、衝動コントロール、対人関係といった広い範囲のパーソナリティ機能の偏りから、絶えず人とのトラブルを繰り返すという心の病気です。注意したいのは、「性格が悪いこと」を意味するものではないということです。

境界性人格障害には、他の精神疾患を引き起こす性質があります。ほかの精神疾患が前面に出ることが多いので、境界性人格障は背後から悪影響を及ぼす黒幕のような病気だということができます。
治療を進めるためには、患者と治療スタッフとが協力して問題を認識し、対策を検討するという作業が重要です。最近の研究からも、この障害は経過中に大きく変化する、治療によって改善する可能性が高いものと考えられるようになっています。

17 私の場合

私の場合は、「大うつ病性障害」です。9つの症状が全て当てはまります。
2回目の休職のとき、最初の診断名で「適応障害」と書かれましたが、現在のN病院の主治医は「大うつ病性障害」と診断してくれています。