精神療法について

うつ病治療の3本柱が、休養、服薬、精神療法であることは、どの書物を見ても、またパソコンでどの病院サイトを見ても記載されているところです。

まず休養は分かろうかと思います。仕事や家事などがストレスとなってうつ病を発症した場合、そのストレスを除けばうつ症状は軽くなりますので、休養は必要です。またうつ病の原因が分からない場合も仕事や家事は出来なくなりますので休養は必要です。

服薬も分かるかと思います。抗うつ薬が効果があるのは5割から7割というデータがありますので、その人たちは服薬によりうつ症状は軽くなるでしょう。

では精神療法はどうでしょうか。うつ病を患っている人もどういうものなのか分からない場合が多いのではないでしょうか。実のところ私もよく分かりませんでした。精神療法というものを意識したことがなかったからです。パソコンのサイトでうつ病患者の体験談などを見ても、ほとんど目に止まりませんでした。ですからここで記載していることは、私が最近考え始めた事もありますが、主にうつ病治療関係の書物や精神科の病院サイトが情報原です。

それでは精神療法とは何なのでしょうか。ザックリ言うと考え方や物の見方が変わったり、行動の仕方を考え直すことを狙っています。うつ病患者の心理面にアプローチする治療方法です。

うつ病の原因を調べる最近の研究では、脳の神経細胞における情報の伝わり方に異変が生じているということが報告されています。私たちは生活の中で、脳から「食べる」「寝る」などの基本的な動作の命令をからだに伝えていますが、「意欲」や「記憶」などの感情を伝えたり、知的な命令もしています。この時、神経の細胞から細胞へ情報を伝えるのが「神経伝達物質」と呼ばれるものです。この中のセロトニンとノルアドレナリンは気分や意欲・記憶などの人の感情にかかわる情報の伝わり方をコントロールし、こころとからだの働きを活性化していると考えられます。うつ病では、何らかの原因で、神経の細胞と細胞の間にあるセロトニンとノルアドレナリンの量が減って、情報がうまく伝わらないため、さまざまな症状が現れると考えられています。

では、その原因とは何でしょうか。抗うつ薬でセロトニンとノルアドレナリンを増やしても、原因を取り除かなければ、再発する可能性が高くなります。

原因はさまざま考えられますが、実はうつ病に至った経緯・背景に心理的社会的問題が存在していることが多いことが分かってきました。これは環境要因とも言えますが、大切な人(家族や親しい人)の死や離別、大切なものを失うこと(仕事や財産、健康なども含む)、人間関係のトラブル、家庭内のトラブル、職場や家庭での役割の変化(昇格、降格、結婚、妊娠など)などが要因となります。こうして見るだけでもさまざまな出来事が要因となりうることがわかります。
そして大切なのが、人間の感情は出来事によって生じるのではなく、その出来事をどう考えるかによって決まるということです。ですから、患者の性格や物事の考え方、行動パターンなどがうつ病の発症に影響していることはよくあることですので、積極的に自分の性格や物事の考え方などを見直し修正していくことが重要となります。

このように精神療法は患者の積極的な心理面へのアプローチが必要ですので、客観的に考えること自体が難しい急性期や重症期ではなく、回復期あるいは寛解期に受ける療法でしょう。また、精神療法が中心的になるのは、環境、役割の変化や喪失体験といったストレスの原因がはっきりしている場合です。

では、精神療法にはいろいろな療法があるようですが、代表的には次の3つ程に分類することができるようです。
1 支持的精神療法
2 認知行動療法
3 対人関係療法

それぞれのやり方を見てみます。

支持的精神療法

「支持的精神療法」は、日常の診察において行われている精神療法です。つまり患者の辛い症状を聞いて、それに対し医師が共感を示すことで、感情の発散を促すとともに、安心感を得ることができます。また医師から薬の効能や今後の考えられる症状の経過などを詳しく聞くことで、回復への意欲を高めることが期待できます。
さしあたっては、医師は患者の訴えに対して、よいとか悪いとか、あるいはまちがっているというようなことは言いません。また安易に励ますようなこともしません。支持することによって患者の気持ちを楽にさせ、精神的に自立できるようにして、回復させていきます。精神療法のうちの特別な方法というよりも、医師の患者に対する働きかけのすベてが支持療法ともいえます。

例えばこういう会話が取り交わされるでしょう。
医師「この〇〇週間 どうでしたか、何か変わったこと、気になることはありませんか」
患者「はい、実は最近〇〇のような気持ちが続いていて、不安感のようなものがあります」
医師「それは大変でしたね 辛かったでしょう。うつ症状のひとつかもしれませんね。先日処方し
   ました〇〇という薬は〇〇のような特徴がありますので、効いてくれば症状は軽くなる可能
   性があります」「うつの症状は〇〇のような経過を通って回復していく人も多いですが、個
   人差もあります。焦らず一緒に治していきましょう」

どうでしょうか。あなたの主治医は共感を示してくれますか。私は2回転院し、3人目の医師との出会いで初めて共感を示してもらえました。その時初めて支持的精神療法を受けることができたという事です。

認知行動療法

「認知行動療法」は、その理論によれば、私たちは自分が置かれている状況を常に主観的に判断し続けているのですが、通常は自動的にそして最も適応的に行われています。しかし強いストレスを受けるなど特別な状況下では、その判断に偏りが生じ非適応的な反応を示すようになってきます。その結果、抑うつ感や不安感が強まるという事が前提になっています。したがってその判断の偏りに焦点を当て、偏りを修正することで治療しようとするものです。

出来事ー自動思考ー感情ー行動の相互関係に注目した方法と言えます。現実の受け取り方やものの見方を認知といいますが、認知に働きかけて心のストレスを軽くしていきます。人の感情は出来事によって生じるのではなく、その出来事をどう考えるかによって決まります。認知には何かの出来事があった時に瞬間的に浮かぶイメージがあり、自動思考と呼ばれるものがあります。自動思考が生まれると、それによっていろいろな気持ちが動き行動することになります。ストレスに対して強い心を育てるためには、自動思考に気づいてそれに働きかけることが役立ちます。

例えば、あなたが上司から至急ある仕事を頼まれたという状況を想定してみてください。
あなたはどう感じますか?
〇また私に頼むのかよ、私も忙しいだよ。自分ですればいいだろう・・・
と考えるかもしれません。あるいは、
〇私も忙しいけど、これは私しか出来ないかもしれないな、頼りにされているということか・・・
と考えるかもしれません。
どちらを考えたとしても、それは1つの個性であり、良いとも悪いとも判断できるものではありません。
しかしうつ病になると人は出来事を否定的、悲観的な方向に考えがちです。判断の偏りが大きくなると抑うつ感や不快感が強まるのです。
認知行動療法では、つらくなったときに少し立ち止まり、そのときに頭に浮かんでいる自動思考を現実にそった柔軟なバランスのよい新しい考えに変えていくことで、その時々に感じるストレスを和らげることができます。
ちなみに、この療法を医療機関で医師によって行う場合は保険が適用されます。

対人関係療法

「対人関係療法」は、対人関係のストレスに対処する方法を学ぶことで、うつ病を治していく治療法です。つまり、対人関係における混乱がうつ病の症状に大きな影響を及ぼすという考えに基づいて、うつ病患者が抱える対人関係の問題の解決を図れるようにすることで、症状の改善を目指す治療法です。この療法は徹底した現実の観察に基づいて作られています。
うつ病になる前に、その人の生活には何が起こったのかというデータから、「悲哀」「不和」「変化」「対人関係がない」という4つの問題領域が決められています。現在の対人関係に注目したうえで、4つの領域のどれに当てはまるかを考えて、そこで起こるストレスが何かを問い直すことで治療を進めていきます。

対人関係療法では、人間関係を「役割」という観点から見るという新しい習慣を身につけることが大切になります。私たちは常に相手に役割を期待しています。うつ症状の変化によって役割も変化していきます。うつが重症期や回復期にある場合は、仕事を休む、家事を休む、というようなことが役割となります。寛解期になれば、健康な人の役割に変わってきます。しかし再発の可能性もありますので、だんだんと社会生活を始めるけれども無理をしないでやっていく、再発防止のための治療が必要だということを周囲の人に理解してもらうことも役割の中に含まれるでしょう。

例えば、うつ病が治ることはもちろん好ましいことなのですが、実際にはこの時期に大きなストレスを感じる人が少なくありません。特に仕事を長期に休んでいたような場合で生活上の変化が大きいときです。実は病気が治ることも「役割」の変化です。休んでいた職場に実際に復帰した時、職場の人たちが妙に優秀に見えることが多いものですが、これはもちろん同僚が急に優勝になったわけではなく、自分の不安を反映したものと言ったほうがよいものです。これも一つの役割の変化に伴う不安なのだというふうにとらえたほうがずっと正確です。新しい役割を受け入れられるよう、役割期待がずれないよう配慮が必要です。したがって自分が新しい役割でやっていくために周囲の人たちに期待する役割をはっきりとさせてみましょう。この時に注意したいのは、「復帰させてもらうだけでもありがたいのに、その上に自分が期待するなどできない」などと思わないことです。役割期待が明確になっていないと、ずれが起こります。ずれは不和につながります。不和が起こると関係者のストレスになります。役割期待を明確にすることは、相手のストレスを減らすことにもなるのです。

以上、いかがでしたでしょうか。
特に認知行動療法や対人関係療法は受ける機会が少ないため、理解するのが難しい面もあるかと思います。実際、これらの療法を医療機関で受けるためには、相応の技量を有した医師にかかり、30分から1時間かけて受ける必要があるので、現実的には難しい点が多いでしょう。
しかし、このような治療法は自分自身でもある程度はできるようです。現在はこのような治療法を自分自身で行うことができるよういろいろな書物が出版されています。こうした書物を利用してやってみるのも一つの方法だと思います。